はちみつのご紹介
はちみつはそれが採れた地域のその季節の景色をぎゅっと詰め込んだ「香りの玉手箱」
はちみつは蜜源になる花や、それができるまでのストーリを知ると、より味わい深く楽しむことが出来ます
東京都世田谷区産はちみつ
越冬したミツバチの群れは二月初旬から少しずつ子育てを始め、家族を増やし、四月初旬頃から勢いよく蜜を貯め始めます。世田谷では公園や学校、畑、住宅の庭などで、菜の花、桜、ツツジ、藤、椎などが順に咲き、その時々に咲いている花の蜜をミツバチ達は効率よく集めて回ります。ですからその時々によって貯まるハチミツの香りは変わって参ります。
四月後半にその年初めての採蜜をしますが、それまでに咲いた花、特に採蜜の直前に咲いている花の香りを強く感じます。この時期に採れるハチミツは少量ですが、私たちは「春一番」と名付けてこの希少なハチミツを大きな喜びと共に味わいます。
五月中旬になるとミツバチ達の勢いはさらに増し、ミカンやユズなど柑橘系の花の香りが強く感じられるハチミツを採ることができます。五月下旬から六月にはクロガネモチやネズミモチ、薔薇の香りが、七月になるとアベリアの香りが感じられるハチミツが採れるようになります。ただ、梅雨に入ると雨でミツバチ達は花の蜜を集めに行くことができず、貯めた蜜を食べて過ごさなければならないので、私たちはミツバチ達の食べる分が無くならないように慎重にハチミツを採るかどうか判断します。また、高温多湿になるとはちみつの濃縮が進まなくなり、十分に糖度が上がるまでに日数がかかるようになります。
八月以降もアベリアやサルスベリ、ヤブカラシなどの蜜が入りますが、五、六月の様に勢いよく蜜は貯まりません。この頃からの蜜はミツバチ達が越冬するための食糧になるので、私たちはミツバチ達の様子を見ながら余剰分をいただきます。
私たちの蜂場は世田谷区の等々力にあり、ミツバチ達はその周囲2~3Kmを飛び回ります。この地域のその季節ならではの風味を是非お楽しみください。
青森のトチ
十和田湖の南側に広がる広大な森はブナやトチなどが多く生える原生林です。5月下旬、未だ淡い緑に満たされた森にはハルゼミの声が響き渡り、上を見上げるとトチの大木には空に向かう白い房状の花があちこちに咲いています。この花は沢山の蜜を出し、ミツバチ達を呼び寄せます。そして花粉交配をしてもらい多くの実をつけ子孫を増やすのです。この実は森に棲む動物たちの貴重な餌にもなります。一方ミツバチ達は花蜜を巣に持ち帰り、トチの花独特なフローラルな香りと柔らかな甘みを特徴とするはちみつを作ります。自然林の中で採ったこのはちみつこそ真の天然はちみつと言えるでしょう。
青森のケンポナシ
青森県では数年に一度、ケンポナシのはちみつを採ることが出来ます。普段は「夏枯れ」ともいわれる蜜の入らない夏に、芳醇なマスカットのような香りの蜜がたっぷりと貯まる年が稀にあるのです。このはちみつは一度食べたら忘れられない上品な香りがします。ケンポナシの木は15から20メートルにもなり、小さな白い花を無数に咲かせ、その蜜や花粉は虫たちの大切な食料になります。また、漢方や材木など、人の生活にも古くから利用されてきました。
北海道の蕎麦
7月下旬、石狩平野の東側山間に丘を越え遥か彼方まで一面真っ白な蕎麦畑が広がっています。蕎麦の花独特の香りが漂う白い花の絨毯の上をミツバチ達は飛び回り、花粉交配をして実りをもたらすのです。一方ミツバチ達は花蜜を巣に持ち帰り、蕎麦の花独特な香りとコクのあるはちみつを作ります。真黒な色をしたこのはちみつには鉄分やカリウムなどのミネラルが豊富に含まれ、ポリフェノールの一種であるルチンも含まれます。このことからも蕎麦のはちみつは特に健康維持に魅力的なはちみつと言えます。